芭蕉の旅の行程
元禄2年4月21日(新暦6月8日)
心もとなき日かず重なるままに、白河の関にかかりて、旅心定まりぬ。いかで都へ便り求めしもことわりなり。
中にもこの関は三関の一にして、
卯の花を かざしに関の 晴れ着かな
曽良
落ち着かない旅の日々が重なっていくにつれて、旅を続けようという気持ちが揺るぎないものとなった。
江戸を発ってから二十日あまり、芭蕉は念願の一つ、奥の細道の旅の第一関ともいうべき白河の関を越して、まずホットした気持だっただろう。昔は白河に関を以って「あづまの国」と「奥の国」との境としたのであるから、この関を越えてから奥の細道の旅は本舞台となる訳です。
何とかしてこの素晴らしい景色を都へ知らせたいと、機会をさがしたという昔の人の話しも当然だ。沢山の関所の中でもこの白河に関は奥羽3関の1つであって、風雅に心をかけている人が心を寄せて和歌を詠んだりしている、有名な歌枕のちである。能因法師が「都をば霞と共に出でしかど秋風ぞ吹く白河の関」と詠んだ秋風を聞いて、源頼政が「都にははまだ青葉にて見しかども紅葉散りしく白河の関」と詠んだ紅葉の姿を面影に浮かべながら、目の前の青葉の梢はしみじみと感じられる。今は卯の花が真っ白に咲いていて、そこに茨の花が咲き加わって、まるでまるで雪の中を越えていくような気持がする。
古人、竹田大夫国行がこの関所を越えるとき、能因法師の名歌が詠まれたこの歌枕の地に敬意を表して、冠を冠り直し、衣装を改め直したことなど、清輔の筆でも記し置かれたということだ。
曽良は、自分にはそのような晴れ着の用意はないので、せめて辺りに咲いている卯の花をかざしてこの関を越えようと詠んだ。
とかくして、越え行くままに、阿武隈川を渡る。左に
須賀川の駅に
風流の 初めやおくの 田植えうた
無下にこえんもさすがに。」と語れば、脇・第三とつづけて、三巻となしぬ。
この宿の傍らに、大きななる栗の木陰をたのみて、世をいとふ僧あり。橡ひろふ太山かくやと閑かに覚えられて、ものに書き付け侍る。 その詞、
栗といふ文字は西の木と描きて、西方浄土に便りありと、行基菩薩の一生杖にも柱にもをこの木を用ひ給ふとかや。
世の人の 見つけぬ花や 軒の栗
ついに白河の関を越え、奥州に踏み入った。阿武隈川を渡り、会津磐梯山を左に眺め、須賀川の宿で商人で俳人の等躬に会って4,5日滞在した。
等窮に「白河の関をどのように越えましたか」と尋ねられたので、「長旅の苦労で心身ともに疲れ、一方では風景に心を奪われ、昔の話に腸を断ち切られるほどの感動を受けて、しっかりと発句を作る気持ちになれませんでした。 耳にした田植え歌が風流を味わう最初の出来事でしたという句を作った」と答えた。そこで、この発句をもとに脇句(第2句)、第3句と続けて、3巻の連句としてしまった。
この宿場のそばに大きな栗の木陰を頼りとして、世俗を嫌って暮らす僧侶がいた。西行法師が「橡拾ふ・・・」と詠んだ深山もこのようであろうかと、閑な暮らしぶりだと思われて、紙に次のような句を書き付けた。
世俗の目にとまらない花だなあ、この栗の木は、この僧侶と同じように。
筆者の旅の行程
平成24年9月13日(木)
- 04:50 起床
- 05:40 自宅出発
- 05:55 土気駅発上り普通電車
- 06:15 千葉駅着
- 06:22 千葉駅発快速久里浜行
- 06:52 錦糸町着、中野行に乗り換え
今日は快晴でスカイ・ツリーがすっきり
見えた
- 07:08 秋葉原乗り換え
- 07:12 上野駅着
- 07:30 上野駅公園口駐車場集合、バスで出発
講師:鈴木先生、TD:鈴木さん
参加者:28人 気温:既に29°C
- 09:15 東北自動車道大谷PAで15分トイレ休憩
- 10:15 白河ICで東北道降り、県道184から国道
294(旧奥羽街道)へ右折して下野の国方
面に南下する - 10:30 境の明神に到着、下野側の玉津姫神社と
陸奥側の住吉神社を参拝 - 11:07 旗宿に向かう途中、庄司戻しの桜を通過。
信夫の庄司佐藤元治が、源義経の平家追討
の拳兵に参加する息子継信、忠信を見送っ
て白河の関まで来たという伝説がある。
- 11:15 白河神社前駐車場に到着
- 11:20 白河神社境内散策、神社に参拝
- 11:45 白河関の森公園前の売店で昼食
- 12:30 白河関の森公園駐車場を出発
- 12:50 白河市街に入り宗祇戻しの碑に到着
- 13:00 白河駅前を通り、東北自動車道で須賀川へ
- 13:45 須賀川市立博物館に到着
館長さんに芭蕉が須賀川を訪れた頃の当地
の俳人たちのお話を聞く - 14:35 芭蕉の足跡を辿って須賀川市街を散策
十念寺、須賀川城址、亜欧堂田善宅跡、
諏訪明神、長松院(等窮の墓)、
芭蕉・曽良石像、等窮宅跡、軒の栗庭園
可伸庵跡、を訪ねた後芭蕉記念館に向かう - 15:50 芭蕉記念館で休憩、奥の細道の話しを聞く
- 16:10 芭蕉記念館をバスで出発
16:28 乙字ヶ滝に到着し、辺りを散策 - 16:45 乙字ヶ滝を出発、帰路に着く
- 17:00 須賀川ICより東北自動車道にのる
- 18:05 大谷PAで15分のトイレ休憩
- 20:10 上野駅公園口駐車場に帰着
- 20:37 東京駅京葉線廻り外房線直通電車に乗る
- 21:36 土気駅帰着、家内のピック・アップで帰宅
芭蕉の足跡を辿って長兵衛が詠める
卯の花も 終わりて暑し 関の森
二所の関 決め手は 森の冷気かな
句碑の数 郷土の誇り 秋の街
句碑残る 梢の陰や 秋の蝉
軒の栗 育ちて黙す 庵あと